人狼ゲーム
ネットで行われる脱出ゲームの一つに、リオは嵌(はま)っていた。
『人狼ゲーム』
参加者が、
殺人鬼の『人狼』。
人狼に殺されるかもしれないという恐怖に怯えながらも、退治しようとする『村人』。
そして人狼にも村人にも属さず、ただ自らが生き延びることに執着する『妖狐』。
という、3つの陣営に分かれて競い合う心理ゲーム。
村人や妖狐には誰が人狼であるかは解らず、彼らは人に成りすました人狼を1ターンごとに開かれる会議によって炙り出し、抹殺しなければならない。
対し人狼は1ターンに一人づつ、餌食にする人間を選び出す。
最終的に村人よりも人狼の数が多く、その村人の中に妖狐が含まれていなければ人狼の勝ち。
存在する人狼を全て退治し、その時点で残った者の中に妖狐がいなければ村人の勝ち。
人狼か村人が勝利条件を満たした時、その中に妖狐が生き残っていれば、妖狐の勝ちとなる。
ゲームの中、それもネットワーク上のことなので実際に人が死ぬ訳ではないし、探偵もトリックも出て来ないけれど、推理小説が好きなリオはこのゲームが好きで遊んでいた。
ある日、人狼ゲームが大好きな連中が集って会話するSNSの呼びかけで、リオは興味深い書き込みを見つけた。
『リアルで会ってゲームしてみませんか?』
それはネット上で人狼ゲームを遊ぶのが好きな人同士のオフ会へのお誘いだった。
ただ合って話をする訳ではなく、主催者所有の無人島を使い、少し芝居仕立てに人狼ゲームをやってみようという試みだ。
さながら、リアル人狼ゲームと言ったところだろうか?
もちろんリオは、すぐに参加を決めた。
リアル人狼ゲーム当日、リオはわくわくしていた。
憧れた推理小説の登場人物になることができるのだ。
もちろん、殺人なんて本当には起きない。
周りを見渡してみれば、他の参加者達も、同様の気持ちのようだった。
ところが、実際にリアル人狼ゲームを始めた1日目、その気持ちは完全に消えた。
つまらなかったとか飽きてしまったという訳ではない。
もっと困った事態が起こったからだ。
まず、初めに起こったのは突然の嵐の襲来。交通手段が海路しかない状況で、島は文字通りの孤島となってしまった。
けれどこの時点では、元が8日間の長期滞在を予定していたこともあり、食料等が充分用意されていたこと、それから、携帯等は通じないけれど固定の電話はつながっていたこともあって、皆は、「滞在が延びちゃうかもしれないね」というくらいの軽い捉とらえ方だった。
本当に困ったのはその後。ゲームではない現実の犠牲者が出てしまってからだ。
更に、追い討ちをかけるように、嵐のせいで電話の線が異常を来きたしてしまったのか、繋がらなくなる。
臨場感を出すためにとられた措置が裏目に出て、これで外に出る手段は8日後にくる迎えの船を待つだけとなってしまった。
2日目。
3日目。
血に餓えた人狼は次々と犠牲者を増やしてゆく。
誰を信じていいかも判らない中で、皆は段々と心を疲弊させ、次は自分かもしれないという怖さに耐えている。
リオもまた、恐怖に怯えた。
けれど、リオの恐れは他の人のそれとは違っていた。
1日目を終えて2日目の朝を迎えた時、リオの唇は赤い血の色に染まっていたのだ。



